現役時代に偉大な記録を残した名選手が、監督となってチームに戻って来るのは、プロ野球ファンにとっては期待感が高まる光景の一つです。しかし、一選手としてチームを勝利へと導いた選手が、必ずしも監督でもチームを勝利に導くとは限らないものです。
その理由の一つに、監督自身が選手としてどの様にプレーしてきたのかを上手く選手達に伝えることが出来ていないことが要因に挙げられています。名選手の中には、生まれ持った天性の才能とも言える独特の感性や直感を武器にプレーをしている選手がいる場合があります。
このタイプの選手の場合、何故その動きをしたのかと言った明確な判断基準や根拠が曖昧なままプレーをしていることがあります。その為、監督として現役時代の動きを含めた指導を行おうとしても、感覚的なものを上手く言葉にして選手達に伝えることが出来ないのです。
他には、かつて自らが経験したのと同じ練習をこなせば、選手達も強くなれると考えている自分基準での成功体験の場合もあります。
監督自身が、結果を残した選手であった場合、同じ練習を行えば選手達が強くなるのには説得力があります。ですが、仮に監督が現役時代に実践してきたのと同じ指導を選手達が受けたとしても、結果を残すとは限らないです。
何故ならば、練習で受ける負荷に耐えられる肉体の強さや練習方法への適性には個人差があります。どれだけ素晴らしい記録を残した名選手が実践した練習方法であっても、現役時代の監督にとって最も適した練習方法であったか、或いは偶然厳しい練習に体が耐え抜いただけの可能性があるからです。